介護・福祉業界でBCP(事業継続計画)への対応が義務化されるなか、一度策定したきりで形骸化してしまう施設は少なくありません。そうしたなかで、訪問入浴や通所介護をはじめ幅広い介護サービスを展開する株式会社スマイル様は、2022年からソネリスと共にBCM/BCPの取り組みを4年以上にわたって継続しています。数あるコンサルティング会社のなかからソネリスを選んだ理由、そして現場に根づいた成果について、管理本部 総務部の野地様に伺いました。プロジェクト概要企業名株式会社スマイル会社概要訪問入浴・通所介護・介護付き有料老人ホーム運営など介護・福祉サービスWebサイトhttps://smile-kaigo.net/従業員規模500名~1,000名ご支援内容BCPマニュアル策定(自然災害・感染症)、有事の対応チェックリスト策定、BCP対策支援、各種訓練実施支援ご支援期間2022年8月~現在(継続中)ご支援前の課題・BCP対応の義務化に対応する必要があった・BCPの進め方を理解している人材が社内におらず、ノウハウがなかった・事業所によって一部防災訓練・消防訓練に形骸化の懸念があったプロジェクトのサマリー・2022年からBCM/BCP支援を開始し、4年以上にわたり継続・スマイル様の実態に合わせた、整備しておくべきマニュアル、シンプルで現場に根づくマニュアルを作成・全社会議での研修や各事業所への訪問を通じ、現場の意識が着実に向上したお話を伺った方:株式会社スマイル 管理本部 総務部 野地様聞き手:株式会社ソネリス 飯田BCPに取り組むきっかけは「義務化対応」だったQ. まず、取り組みを始めた一番のきっかけは何だったのでしょうか。野地氏:やはり一番は「法令遵守(コンプライアンス)」、つまり義務化への対応です。ただ、BCPをどう進めればいいのか誰も理解していなかったので、外部のプロにコンサルティングに入ってもらい、ノウハウを学びながら社内に浸透させたいと考えました。また、元々義務化されている消防訓練や防災訓練が、事業所によっては形骸化している懸念もありました。これを機に全社一斉に、きちんと意味のある訓練を行おうと、そこにBCPのエッセンスを加えていった形です。介護サービス事業者としてお客様を守る義務があるQ. 当時から「防災」は経営課題の一つとして捉えられていたのでしょうか。野地氏:はい。スタッフはもちろんですが、サービス事業者として「お客様を守る義務」があります。そこをおざなりにすることは、利用者様に対して失礼にあたると考えていました。事業所全体で管理しやすい体制を作るためにも、一斉に取り組むことにしました。Q. スマイル様は元々、全事業所同時の訓練や、災害時の情報共有体制があるなど、独自に高い意識を持って取り組まれていましたよね。野地氏:そうですね。バックオフィスのスタッフに、緊急事態に対する意識が強いメンバーが偶然揃っていたこともあります。「指示がなければ動けない」という人間はいませんでした。例えば東日本大震災のとき、ボランティアに行こうという話になった際、現場は人が抜けない状況でしたが、バックオフィスのメンバーは全員が手を挙げました。機能が止まってしまうので選抜しましたが、自分たちの強みである「訪問入浴車」を使ってお風呂の支援ができるのではないか、と自ら考えて動く土壌がありました。義務化対応にあたってはプロと協業する一択だったQ. 元から強い防災意識があったにもかかわらず、支援会社へ依頼した理由はなんでしょうか。自社だけで取り組むことは考えませんでしたか。野地氏:義務化となった際は、最初から「プロへ依頼する」という一択でした。BCPの支援会社5~6社には問い合わせました。というのも、BCPの進め方を分かっている人が社内にいませんでしたし、どこまでやればいいのかも分からなかったため、外部の方とセッションしながら進めたほうが絶対に実りあるものになるだろうと思っていました。実際、自社だけでやっていたらここまでのレベルには来られていなかったです。長期で信頼関係を築けると確信し、ソネリスを選定したQ. 5〜6社も問い合わせされていたんですね。その中でソネリスを選んでいただいた決め手は?野地氏:「BCPに特化されていること」と、実際に直接お会いして話を伺った際の内容が大きかったです。外部の支援会社とは長いお付き合いになるだろうと思っていたため、数年単位で「パートナー」としてやっていくと考えたときに、信頼関係を築けるかを一番重要視していました。大手の支援会社はコストは高く、ビジネスライクで淡々としていて、熱量不足に感じる面がありました。当社に寄り添った内容というよりは、押しつけのような提案に感じる部分が多かったです。その点ソネリスさんには当社に合ったプランを提案していただき、「この人たちだったら大丈夫だ」と思えました。経営層を巻き込むためにリスクとリターンを明確にするQ. BCP/BCMに対して重要性は理解していても、経営層が「今は後回しでいい」と判断してしまうケースもあります。社内で取り組みを進める際、経営層へはどのような働きかけましたか。野地氏:経営層に対しては、シンプルに「数字に関わりますよ」と伝えました。義務化された以上は遵守する必要がありますし、対応しておかなければ補助金や人事関連の助成金が受けられなくなる可能性もあります。また、最悪の事態が起こった際に「マニュアルも整備していない」「何もやっていない」となれば企業としての責任問題になりえます。経営判断としてのリスクとリターンを明確に説明すれば、納得しない経営者はいないと思います。ガチガチのマニュアルは埃をかぶるだけ。現場に根づく分かりやすいマニュアルを作れたQ. マニュアル作成後の変化として、現場の方々の反応はどうですか。野地氏:現場は日々の業務に追われているため、マニュアルを難しくしてしまうと絶対に浸透しません。いざというときにパニックで考えられなくなるのは理解できるのですが、だからこそ「最低限これだけはやってください」という意識付けをどうするかが大切です。その点、ソネリスさんに作っていただいたマニュアルは非常にシンプルで分かりやすく、当社に合っていると感じます。ガチガチの時系列マニュアルを渡されても、絶対に埃をかぶるだけですから。プロの視点で重要なポイントを押さえたものが1枚あるだけで、意識は大きく変わります。そこは本当に良かったと思っています。Q. 各市区町村の実地指導で、何か指摘されたことはありますか。野地氏:おかげさまで、BCPに関しても他の項目に関しても、今のところ問題ありません。指摘されるどころか、「よくできていますね」と褒められることもあります。Q. これまでの取り組みのなかで、印象に残っているエピソードや場面はありますか。野地氏:印象的だったのは、全社の会議に参加して研修を行っていただいたことや、実際に各事業所を訪問して現場を見ていただいたことですね。マニュアルを作っていただいたあとは、タイミングによっては私が直接現場に足を運んで手渡すようにしています。最近取り組んだ津波対策についても、全拠点を回って説明しながら配布したのですが、現場のスタッフもすでにBCPを理解しているので、「これは津波のものですね」とスムーズに本題へ入っていけます。意識は確実に上がっていると実感しています。負担なく形骸化もせず、BCP/BCM活動が社内に浸透しているQ. ソネリスとの取り組みに対する率直な評価や、一緒にやって良かったと感じる点はどこでしょうか。野地氏:お世辞抜きで不満は一切ありません。ノウハウを全く持っていなかったため、プロの指導をもらえたこと、これに尽きます。それを数年かけて継続していただいていることが、一番の価値だと思っています。Q. BCP/BCM活動に関して今後の展望はありますか。野地氏:今の感じがちょうどいいのかなと思います。そんなに負担にならず、形骸化もせず、ここまで進んでこられました。大きな問題もなく取り組みを長く続けられていること自体が、社内へ浸透できている証だと感じています。あとは会社の方針次第ですが、全社の対面での研修をやってみたいなと考えています。現状すぐには難しい状況があるため、先々に考えていきたいですね。BCPに取り組む担当者へのメッセージQ. 最後に、BCP/BCMにこれから取り組む他社のご担当者へメッセージをお願いします。野地氏:顧客を抱えている会社には、お客様を守る責務があります。それを全うするために不測の事態に備えることは当たり前の義務です。だからこそ、不測の事態が起きたときへの備えを形骸化させずに浸透させていく必要があります。当社も引き続き、さまざまなツールを作ったり、研修を行ったりして、社内へ浸透させる取り組みを続けていきたいと考えています。